株式会社Noveraが運営する、スマートフォン向けアプリ「viewty」のAI技術の紹介をするブログです

Beauty×AIで生まれる未来の美容【viewty BRAIN SALON Vol1 REPORT】

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 近年AI(人工知能)は様々な分野で活用され、その注目度を高めている。ビューティ業界でも耳にすることが増えたが、AIの本質的な意味やその活用法について実は知らないという人も多いのではないだろうか。

 株式会社Noveraが手掛けるスマートミラー「Novera」や肌診断×口コミアプリ「viewty」は、AIによる肌分析を基としたサービスで、Noveraはポーラ化成工業研究所と共同研究を発表している。今回はその知見から、「AIとは何か」、また「AIを美容分野で活用したらどうなるか」といったテーマについて、ポーラ化成工業研究所で講義「viewty BRAIN SALON」を行った。

 「viewty BRAIN SALON」とは、「viewty」のAIを開発したNoveraの諸冨大樹氏がメンバー企業向けに開くコミュニティ。ビューティ業界における最新の市場や技術トレンドを講演中心で伝えるもの。

 

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諸冨大樹

2017年に「異能ジェネレーションアワード 協力協賛企業 特別賞」を受賞。翌年から現在まで、JDLA認定講座の講師としてNTT、東芝テック株式会社を始め200名以上の生徒に教鞭をとる。NoveraのAI開発責任者



人間が出来ないことはAIにも出来ない

AIは自動記事作成や混雑予測、見る人の好みに合わせた広告表示など様々な領域で実用化されている。諸冨氏はAIを「人間の脳の働きを、PCで行えるようにしたもの」と説明する。しかし出来ること出来ないこと、適していること適さないものはもちろんある。

 教師あり学習の場合、出来ることは大分すれば2つしかないという。それが「回帰」と「分類」だ。諸冨氏は「例えば回帰は株価予測や需要予測、分類は性別や動物の種類などを分けること。AIは特別に複雑なことをやっているわけではなく、本質的な性格はこの2つ」と話す。

 AIはPC上でこの2つの仕事を行う。そのため「記憶力(ストレージ)と演算力(プロセッサ)が拡張すればそれだけできることが増える」のだ。例えば現在、実際にAIを活用してできることに「ハリウッド女優風の顔写真を生成する」というのがある。実在するハリウッド女優の顔を多くAIに記憶させ、その特徴を基に、実在しそうだが実在しない女優の顔写真を作る。当然、記憶力と演算力が拡張すれば、よりはっきりとした顔写真を高速で産むことが出来る。

 さらに「人間が出来ないことはAIにも出来ない」と諸冨氏。「例えば私たちから見て、真っ黒でどんな人なのかも判別できない写真を単純にインプットをするだけでは、AIも誰だか分からないし、当然肌検知もできない」。

AIがビューティ領域で出来ること・していること・していくこと

ビューティ領域では主に検知系、解析系のタスクを行うのに活用されるという。検知系はまさに「Novera」「viewty」が行う肌画像からの分析で、解析系はアンケートや観測データを基に予想モデルを構築することだ。

 今後はこの2分野に加え、探索系、生成系が入ってくると諸冨氏は語る。探索系は「ネットフリックス」が各個人に対してレコメンドを変えるような広告最適化の分野で、生成系は前述の、実在しないハリウッド女優の写真生成のようなことが挙げられる。

 では、今後AIは具体的にどのような転用のされ方をしていくのか。諸冨氏は最新のビューティ領域での研究を紹介した。

 

①メイクアップ画像とノーメイク画像を生成

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 現在ではスマホアプリ、店頭、さらにECサイトへの実装などが進んでいるバーチャルメイク。リップやアイシャドウをモニター上で自分の顔に投影するという画期的で手軽な“タッチアップ”は人気が高まり、購買にも影響を与えている。しかし現在のバーチャルメイクアップは投影できる化粧に限界があり、目や口などのパーツ毎に、比較的単純なメイクアップスタイルのみを投影するものとなっている。

 

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 この研究は、複雑なメイクアップスタイルを投影(転送)できる技術を構成するものだ。これまではパーツ毎の投影しかできず、それらを全て結合する際、パーツとパーツの境界の転送(投影)/削除が不可能だった。これに対し、その境界線も重複して生成する機構を加えることで、複雑なメイクを忠実に投影できるようにした。またメイクした画像からノーメイク状態の画像を生成できる技術もこの研究の特徴の1つ。

 

引用論文:LADN: Local Adversarial Disentangling Network for Facial Makeup and De-Makeup

https://arxiv.org/pdf/1904.11272.pdf

 

②医者の診断プロセスをAI化する

 近年は皮膚科や放射線科の医師が行う診断フローをAI化しようとする動きが活発になっているという。

 

 この研究では医師の診断フローの中にある画像診断と問診をAI化し、かつ問診の質問個数を最小限にして正解にたどり着く構造を作ろうとした研究で、患者のストレス緩和にも繋がる技術だ。

 

引用論文:Improving Skin Condition Classification with a Visual Symptom Checker Trained using Reinforcement Learning

https://arxiv.org/pdf/1903.03495.pdf

 

「viewty」流の肌分析

 肌分析からその人に適した化粧品を見つけるサポートを行う「viewty」もAIを活用しているが、「Garbage in, Garbage out(GIGO、ゴミからはゴミしか生まれない)」という考え方から取得データが特殊な手法を使用せず、継続的な肌計測をモットーとする。

 「歯抜けデータや1回だけ取得した肌データ、特殊な手法で取得した画像等からは不完全な回帰、分類モデルや不完全な肌検知しか行えない」と諸冨氏。現時点では世界を見渡しても、継続的に・特殊な手法を用いず・活用できる肌データを持つ美容企業はないという。

 「viewty」はこういったGIGOに対応すべく、スマートフォンを活用し、新規性があり恒常的なデータ、
分析基盤を固める努力を行う。そして美容のプロ200人の視点で見た顔画像の判断基準を明確に言語化し、アノテーションを行う。プロの目を忠実に再現することで肌診断を行うという仕組みを取る。

 「美容のプロの目を再現する」という点で、肌検知アルゴリズムについて2つのアプローチがある。例えば「混合肌であるか」を調べようとした時、皮脂の出やすいTゾーンと乾燥する輪郭をポイントとして画像から抽出するのが一般的だ。しかしこれは人間が意図的に抽出箇所を指定するものだ。

 ここで「viewty」はAI(CNN)構造を活用した手法を取る。こちらの方法では抽出箇所を特定せず、「正解データに対して、我々が認識していないまだ見ぬ特徴量を抽出してくれる」ことが可能で、より正確性の高い肌検知ができる。「なぜAIを活用するのかというのは非常に大事な問いで、我々は“プロの目を忠実に再現する”ための手段として用いている」という。

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 ※「YNL(You never learn)系アルゴリズム」は、諸冨が説明の利便性のために使用している独自の名称です

 さらに新規性があり恒常的なデータとAIを組み合わせることで、ニキビ予測を行うという。肌分析結果、使用するスキンケアアイテム、アンケートデータに加え、過去のニキビのデータも組み合わせることで、いつどこにニキビが出来るか予測できるのだという。

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美容業界 × AIが抱える課題

 講義の後は諸冨氏に加え、Noveraの遠藤国忠CEOも加えて質疑応答の時間が設けられた。

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ーーAI(CNN)が肌診断を下した理由をクライアントにどのように説明すれば良いか

 CNNであれば、AIが特徴量の抽出をどのように行なっているのかを可視化できる。それを基に説明することができます。ただし、説明する側に正確な知識と言語化能力が必要なのでそこは学ぶ必要があります。

 

ーー肌の定義(敏感肌等)は会社毎に異なるが、どのように反映できるのか

 企業毎に定義が曖昧であるのは良いことだと考えています。基本的に、先ほどの講義でも触れましたが、CNNではラベル付けされたデータさえあれば、あとは特徴を自動で抽出するので、人間が意図しなかった特徴も抽出できる。つまり、人間以上に正確な判断をAIができるということです。ただし、データに不整合が起きるとバグやエラーの原因になるので、人間が調整する必要はあります。

 

ーーAIと美容領域の研究はどのように進んでいるか

 香港の大学は化粧系の研究が多いが、スキンケアや肌研究はあまり題材にされていない。病院や大学と比べて化粧品会社は研究ができる資金力がある。しかし化粧品会社はIT・デジタル分野は得意とは言えないので、今後の研究にはやはりAI領域のリテラシーを持った人物が必要になりそうだ。

 

 また研究は先ほども論文をいくつか挙げたが、設計までで論文を書いていることも多く、実装までいけてない、思想で終わっていることもある。なので実装する人によって解釈とアウトプットの仕方が変わっていたりする。

 

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ーー美容 × AIの課題となっているところは?
 ビューティとAIを絡めて話せる人が業界的に少ない。AIはしっかり勉強しようとすれば何年もかけて勉強代もかかる。現時点ではビューティとAIの領域を理解できる人は海外から連れてくるしかないくらい、日本の美容業界でAIエンジニアは貴重。化粧品に関心を持ったAIエンジニアの不足は業界の課題になる。

 発表されたばかりのホットな話題だが、花王さんが機械学習技術に強みのあるPreferred Networks(PFN)さんと組んだ。花王さんも以前から肌研究をされていたので、今後はそのような協業も業界的には増えそう。

 

文, 写真:臼井 杏奈

 

viewty BRAIN SALON Vol2 開催のお知らせ

viewty BRAIN SALON会員限定イベント第2弾の実施が決定しました。Beauty×AIに少しでもご興味のある方はお問い合わせページよりご連絡くださいませ。


■日時:12/3 16:00 - 18:00
■場所:Mistletoe Of Tokyo
    東京都目黒区大橋2丁目22−42 地下1階
■定員:20名程度(申込多数の場合抽選)
■対象:マーケター, 営業, 企画
■費用:5,000円/人(当日受付にてお支払いお願い致します)
■持ち物:お名刺2枚
■講演内容(予定):
①11月の肌×化粧品リアルREPORT紹介
 ・自称肌質と測定肌質の差
 ・年代別, 測定肌質構成比
 ・年代別 肌質
 ・肌質別 投資金額
 ・肌質別 閲覧ブランドランキング
 他
②わかりやすい最先端AI×Beauty
 ・画像分析 vs ディープラーニング
 ・「来週この辺ニキビできるよ」は実現可能!?
 他
③サンプリングをバラマキで終わらせないための肌データ活用

※講演内容は予定となります。告知なしに変更する場合がございますのでご了承ください
※終了後に参加者の方々と名刺交換するお時間ございます

 

お申し込み方法

https://www.viewty-brain-connect.jp/

お問い合わせページより、参加の旨をご連絡くださいませ。

企業, 大学等に出張してのSALON開催も承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

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